宅配業とお金の知られざる実態…配達ノルマは3分に1個を「7時間以上」

ネットショッピングの普及などに伴い、特にコロナ禍以降は、宅配便の取り扱い個数が急増している。普段人々が何気なく利用している宅配サービス、しかしその荷物一つひとつは人の足と手によって届けられている。 【動画】信じられない！海外でも多発する「荷物を投げる宅配業者」

今年で結成30年を迎えるお笑いコンビ・アンバランスの黒川忠文は、芸能活動のかたわら宅配業に従事して15年のベテラン配達員。本コラムでは“宅配のプロ”である彼が、長年の経験をもとに積み重ねてきた配達テクニックや、その過程で経験した数々のエピソード、宅配業の裏側を明かす。 あなたの荷物はどんな経緯をたどり、どんな思いを背景にして届けられているのか。

お笑い歴30年、宅配業歴15年の“宅配業者芸人”

みなさま、初めまして。お笑いコンビ・アンバランスの黒川と申します。 いきなりですが、今や誰もがテレビやネットでのショッピングを利用していると思います。Amazon、楽天や個人売買のメルカリ、ヤフオク！などその種類はたくさんあるものの、最終的にお客様の手元に届けるのは宅配業者です。 今回は、宅配業に従事して15年の私が、この仕事を始めたきっかけからお話しします。

二足のわらじ生活のきっかけは、「たった4000円」の月給

以前、私が在籍していた芸能プロダクションはお給料制だったため、仕事が有っても無くても生活は安定していました。お笑い芸人で給料制というのは大変珍しく、他の芸人から羨ましく思われてました。 でも次第に「こんなぬるま湯に浸かってていいのか？」と思うようになり、コンビで相談して、歩合制に変えてもらいました。当時、毎週のレギュラーと単発の仕事もあったので、何とかなるだろうと思っていたのです。 しかし、歩合制に変わってから初めての給料日。銀行口座を確認すると、事務所名義で借りていたマンションの家賃引かれて入金されてたのはたったの4000円！これでは、奥さん、当時小学3年と1年の娘二人との4人家族を養っていけません。 そういうわけで、すぐに宅配業の門を叩いた次第でございます。

3分に1個で1日平均150個を配達

この連載では、そんな私から宅配業の基本や裏側、エピソードをご紹介させていただくことで、みなさまに少しでも「宅配」に興味を持ってもらえたらと思います。 はじめに、私たち宅配業者が1日に取り扱う配達物の個数や、ひと月でどれくらい稼げるのか、といった基本情報をご紹介していきます。 まず一日の配達個数について。配達者個人の能力や配達地域によって違いますが、私が担当する地域では平均150個くらい、多くて200個以上を配達する人もいます。

私の場合、1時間の配達件数は20個くらい。「少なくない？」と思う方もいるかもしれませんが、1時間で20個という事は、3分に1個ということ。そう考えると、なかなかのハイペースです。 しかも1時間に20個という配達件数は、スムーズに配達出来た場合の話です。 一つ配達して次のお宅へ移動する時間もかかれば、不在票を書いて投函したり、宅配BOXへ入れる作業もあります。また、代引きの荷物であれば、代金を受け取ったりお釣りを渡したりと、作業が増えれば増えるほど荷物1個あたりにかかる時間が長くなります。 単純計算すると150個を配達終えるのに7時間半かかることになりますが、これは休憩なしでの時間。 加えて、朝の荷物の積み込みや帰社後の荷物保管、代引きの入金作業など加えると……結構大変なのが分かってもらえると思います。

“荷物1個あたり”の歩合制で働く配達員も

さて、皆さんが気になるのは「これでどれくらい稼げるのか？」ということでしょう。実は、配達員の稼ぎは雇用形態によって違いがあります。 例えば運送会社の社員であれば、給料制のため安定した収入が見込めます。私自身が複数の会社のドライバーとお話して算出した平均金額は、月給35～40万ぐらいでしょうか。

一方、社員ではなく委託で配達している、宅配業界では「サポーター」と呼ばれる配達員もいるのですが、この場合は荷物1個あたりの歩合制になります。それも、あくまで配達完了出来た個数によって歩合が決まるので、不在で持ち戻った荷物はお給料として計算されません。 委託してる会社によって金額の違いはありますが、私が聞いたところでは1日150個の荷物を配達して（不在なしで）、2万～2万5千円くらいがサポーターの平均日給だと思います。 またサポーターは、配達に使う車を個人で所有してるかリースしているので、燃料、メンテナンス費などがかかります。こういった負担は、配達員にとって大きなストレスになる場合もあると思います。

荷物を放り投げた配達員……その原因を考える

結構前の出来事ですが、ある配達員が荷物を放り投げた動画がニュースになった事がありましたね。そのニュースを見て私は、その配達員の背景や、抱えていたかもしれないストレスについて考えてしまいました。 台車に荷物を乗せてマンションに配達へ行ったものの、ほとんどが不在。なかには再配達を依頼してきたのに不在ってのもあったのかも。しかも宅配BOXが設置されてないか全部使われてて入れる事が出来ず、イライラが募って爆発した……ということも考えられます。

社員のドライバーならば不在でも給料に影響ないですが、配達済みの荷物数によって給料が決まるサポーターだった場合のことを考えると、イライラする気持ちも全く分からないわけではないです。 とは言え、同じ宅配業に関わる者としてあんな荷扱いをするのは断じて許せませんね。私はどんな事情があれども大事に扱って、笑顔と共に届けています。

最近では、コロナ禍で自宅リモートでの仕事をするお客様が増えたので在宅率が高くなりましたし、宅配BOXの設置も多くなり、以前より不在の荷物は減りました。 しかし、お客様が不在のため何度もお届けに伺うケースはいまだに多いです。 配達員への負担を減らすために、今では各社が色々なサービスを提供しています。例えば受取日の変更依頼ができるサービスや、コンビニや駅に設置されている宅配ロッカーなどは、お客様にとっても配達員にとっても大きなメリットがあるものなので、是非活用していただきたいです。 当然ながら、いち配達員としてのサービス向上も努力していきますので、どうぞよろしくお願いいたします！

5/18(水) 7:03

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