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自分はもう役立たず? 役職定年の50代こそ新人研修を

  • 執筆者の写真: 茂 鈴木
    茂 鈴木
  • 2022年5月20日
  • 読了時間: 5分

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キャリアアップや人間関係構築、給与などの待遇面、転職や起業――。

技術者の多くは、自分の働き方について様々な悩みや不安を抱えています。人事コンサルタントとして様々な企業の職場活性化を支援する天笠淳さんが、こうした不安を解消し、働く楽しみを見いだすための具体的な方法を紹介します。


新入社員が加わって職場が新鮮な雰囲気に包まれる春。一方でベテラン社員の中には、自身の今後について不安を抱いている人もいるのではないでしょうか。 筆者の知り合いのイトイさん(仮名、55歳)はそんな1人です。イトイさんはここ数年、よく見聞きする早期退職制度のニュースに戦々恐々としていました。業績悪化に伴う人員削減ではなく、「スキルの入れ替えのために黒字企業でも早期退職制度を導入する」といった報道もあり、まるで「50代は職場の役に立たない」と言われているかのような気分になります。「明日は我が身かもしれない」という不安が拭えませんでした。 そうこうしているうちに自分も55歳になりました。役職定年を迎えたものの職場も仕事内容も変わらず、変化したのは給与が減ったことのみです。 こんなときにどのような気持ちで仕事に取り組んだらよいのでしょうか。イトイさんが筆者に教えてくれた話には、多くのヒントがありました。


■「とにかく良い人になろう」と決めた

仕事は同じなのに給与が減るのは納得しがたいかもしれません。筆者自身、勤務先の経営事情によっていや応なく給与を減らされた経験がありますから、よく分かります。しかしそれを嘆いても何も変わりません。 定年を60歳とした場合、イトイさんの会社人生はあと5年です。「まだ5年もある」と捉える人も多いのですが、土日祝日や年末年始の休暇、有休消化などの日数を数えてみると、最終年は意外に慌ただしく過ごすことになります。 そう考えると、落ち着いて働けるのはあと4年。役職定年後の最初の1年を無駄にすると、そのまま惰性で3年間過ごしてしまうのではないか――。


イトイさんは、そんな危機感を抱きました。そうならないために、イトイさんはある目標を立てたのです。 それは「職場ではとにかく良い人になる」というものです。与えられた仕事はこなしながら、とにかく後輩にとって良い人になろう、うっとうしく思われるくらい親切な人になろうと考えたのです。 そう決意した背景には、ベテラン社員向けキャリア研修で教えられた「退職日をこう迎えたいというイメージを持ってください」との言葉がありました。イトイさんの頭に浮かんだのは、「仕事で何かをやり遂げて退職する」というよりも、「たくさんの同僚に温かく送り出してもらいたい」ということでした。そのために、とにかく人のため、職場のためになることをして退職までの時間を過ごそうと思ったのです。 とはいえ最初は何をしていいか迷いました。昭和の時代でもないし、いきなり机の上を拭いたりしてもメンバーは戸惑うでしょう。試行錯誤した結果、最も継続しやすく効果があると感じたのが「同僚に元気良くあいさつする」ことでした。 それまで職場の同僚へのあいさつなど意識的にしたことがなかったのですが、いざ心がけてみると好意的な反応があり、従来よりもコミュニケーションが活発になりました。これによってなんだか自分の居場所を自分で獲得できたような気がして、仕事に張りが出たそうです。


■週1度のミーティングが上司にとっても有意義な時間に

あいさつといえば、社会人の基本中の基本です。つまりイトイさんが役職定年後に実践したのは、新入社員研修で新人が教わるようなことでした。自分の部署に配属された新人も同じように大きな声であいさつしているのを見て、ライバルのような仲間のような感覚を抱きました。 そして新人とも打ち解けたイトイさんは、新入社員研修のテキストを見せてもらいました。あいさつと並んでテキストに記載されていたのが、報連相(報告・連絡・相談)の大切さです。 だったら自分もやってみようと、上司に週1度の短時間ミーティングを希望したイトイさん。


上司は「定期的に文句や愚痴を言われるのか」と最初は身構えたようですが、杞憂(きゆう)に終わりました。イトイさんは役職の責任がなくなった分、報告と合わせて無意識に前向きな提案をするようになったのです。 あいさつ運動の結果、イトイさんはメンバーとも密にコミュニケーションが取れ、職場の状況をよく把握していました。上司にとってイトイさんとのミーティングは、職場をより理解できる有意義な時間になったのです。


ミーティングでは「次は整理整頓に取り組もう」という話になったそうです。これも社会人の基本です。勝手に片付けるのも角が立つし、新型コロナウイルス禍では消毒の問題もあるしどうしたらよいかと思案するイトイさんは、とても楽しそうです。 定年までの時間をどう過ごしたらよいかと悩んでいる50代の皆さんは、試しに新入社員研修のテキストを新人から借りてみてはいかがでしょうか。イトイさんのように、ベテラン社員が取り組むからこそ面白い効果があるかもしれません。


天笠 淳(あまがさ・あつし)アネックス代表取締役/人事コンサルタント早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。著書に『転職エバンジェリストの技術系成功メソッド』『オンライン講座を頼まれた時に読む本』(いずれも日経BP発行)がある。


[日経 xTECH 2022年4月28日付の記事を再構成]


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