知らないと大損する「在宅介護」後悔のない“在宅医&ケアマネージャー”を選ぶ「意外なコツ」
- 茂 鈴木

- 2022年4月26日
- 読了時間: 5分

ある日、突然「要介護」はやってくる。誰もが「いつか自分も」と思っているが、実際に必要が迫ると、途方に暮れてしまう。 【写真】貯金3000万円で「海辺のリゾート」に引っ越し、すべてを失った夫婦の悲劇
老人ホームなどの施設に入ってしまえば、すべてお任せすればいいが、できるだけ自宅で過ごしたいという希望を叶えるには、自ら諸々の手続きをこなす必要が出てくる。 前編記事『知らないと大損する「在宅介護」…必要なサービスを受けるために「やってはいけない」意外なこと』では、いざというときに備え、最適な在宅介護・在宅医療を受けるための手順をお伝えした。 手続きが無事に終わっても、ほっとするのはまだ早い。長丁場になる場合もある介護生活を充実した日常にするには、ほかにどんなことに注意すればいいのか。専門家が解説する。
ケアマネの専門に注目
要介護認定が終わったら、ケアマネジャーと実際にどのような介護を行うかプランを立てて、介護生活はスタートする。在宅で介護を受けるのに最も重要になるのが、ケアマネ選びだ。要町ホームケアクリニックの吉澤明孝院長が語る。 「訪問調査でケアマネが認定員としてやってきて、『自分が直接担当しましょうか』と提案されることが多い。彼らにとってみれば、訪問調査が営業活動の一環になっているのです。
しかし実際には、在宅介護をするうえで、ケアマネと相性が合わないケースはよくあります。よくわからないままに安易にケアマネを決めてしまうと、のちのち後悔することになりかねません」 一言でケアマネといっても出自はいろいろだ。「在宅介護エキスパート協会」代表の渋澤和世氏が解説する。
「どのケアマネも基礎資格(看護師、介護福祉士、社会福祉士など)に応じた実務経験を5年以上もっています。この資格によって得意分野が異なるので、なにがいちばん困っているのかを考えて選ぶといい。前職が介護系のケアマネであれば食事や買い物など生活面での対応がスムーズですし、健康面での不安が大きいなら看護系の経験者が頼りになります」
できるだけ在宅で過ごしたい、可能であれば穏やかに在宅死を迎えたいと考えている人にとっては、ケアマネの経験値が非常に重要になってくる。ホームオン・クリニックつくばの平野国美院長はこう指摘する。
「看取りの経験が豊富なケアマネなら、不安なく自宅で最期を迎えられるでしょう。一方で本人や家族は在宅死を望んでいるのに、救急車を呼んで無理に入院させようとするケアマネもいる。終末期の運命を握るのは、ケアマネなのです」 要介護認定を受けた人を担当するケアマネは居宅介護支援事業所に所属している。
地域包括支援センターで事業所の一覧表がもらえるので、いくつかピックアップして電話してみよう。わからないこと、不安なことを質問して、複数の事業所に自宅に説明に来てもらう。比較検討した上で、いちばん信頼できると感じた事業所のケアマネと契約すればよい。
ケアマネ選びと同じく重要なのが、在宅医療を受けるための往診医(在宅医)選びだ。板橋区役所前診療所の島田潔院長が、良い往診医を見つけるコツを語る。 「最も安心できるのは、かかりつけ医が往診をやっているケースです。医療は継続性が重要なので、普段から診てもらって、持病や飲んでいるクスリを把握している医者がいちばんなのです。もし、かかりつけ医と違う往診医にかかる場合も、必ず『紹介状』を書いてもらいましょう。特に高齢者は過去の病歴との比較が大切です。
一方で、インターネットや口コミの情報はあまり当てになりません。往診医にかかっている人は、基本家にいて、近所の井戸端会議には加わることができませんから、口コミで情報が流れることは少ないのです。それよりは地域の介護、とくに看護事業者のほうが確かな情報を持っています」 全国在宅療養支援医協会で監事を務める和田忠志医師も、かかりつけ医が重要と語る。 「長く患者を診ていれば、かかりつけ医は責任感も強くなります。在宅医療を依頼すると、応じてくれることも珍しくありません。その先生が往診に対応していなくても、信頼のおける在宅医療の医師を紹介してくれる可能性が高い。 かかりつけ医に在宅医を紹介してもらい、その在宅医にケアマネを紹介してもらうのもいい。そうすれば、自宅で継続的に療養できる介護体制をしくことができます」
歯医者も家に来てくれる
往診医は内科か外科の出身が多いが、基本的には総合診療医としてあらゆる病状に対応できる。 往診の基本は定期訪問診療。月に1~2回、都合のよい日時を相談して訪問し、血圧や脈拍、食事や服薬状況をチェックする。また、患者に異変があれば臨時の往診も行われる。 「加えて心強い制度が、介護保険のサービスである『居宅療養管理指導』です。例えば、薬剤師が家に来て飲んでいるクスリの管理をしてくれたり、歯科医師・歯科衛生士が自宅で歯の治療や調整を行ってくれたりします」(島田院長) 他に理学療法士がリハビリを行うこともある。 このように在宅介護・医療のサービスを組み合わせれば、保険の利く範囲でかなり充実した支援を受けられる。
実際、要介護1の約76%、要介護5であっても約40%の人が在宅で介護を受けているというデータもある(生命保険文化センター「令和3年度生命保険に関する全国実態調査」)。 施設に入ってしまえば、食事の時間やリハビリ、入浴などの時間もすべて決められて、窮屈な暮らしを強いられる。できるだけ自由な生き方を満喫したいなら、在宅サービスを最大限に利用して自宅で過ごそう。
『週刊現代』2022年4月23日号より
週刊現代(講談社)




コメント